【第41回日本チャンキー協会通常総会を東京で開催】
日時:2013年6月5日(水)
場所:東京グランドホテル

2013年6月5日(水)に、東京グランドホテル(東京都港区)において、第41回日本チャンキー協会通常総会を開催致しました。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA総会の冒頭に十文字保雄会長(㈱十文字チキンカンパニー社長)は「この度は日本チャンキー協会総会のご案内を申し上げました所、沢山の会員の皆様に参集頂きまして誠にありがとうございます。
ここ1年、当業界は年末年始の市況の盛り上がりを除き、大変厳しい環境にありました。4月からの新年度を迎えるにあたり、輸入チキンの在庫過剰は収まりつつありますが、円安による飼料等の値上がり、輸入牛肉の規制緩和、タイからの生鮮鶏肉の輸入再開の兆候、それにアベノミクスによる景気回復での高価格食材への回帰、と我々にとっての悪材料が待ち構えているように思えます。このままでは2年連続の厳しい経営環境になることが予想されており、より踏み込んだ変化への対応が求められていると認識しております。それは企業内の経営努力に留まらず、国内チキン業界全体の生き残りのことでもあります。一つ間違えば、ブラジルやアメリカの例のように巨大企業でもおかしくなる可能性があります。海外のようにイチかバチかのM&Aではなく、社会の役割分担としてのあり方として、着実で合理的な進化が日本のチキン産業に求められている気がしてなりません。

では、国産チキンとしてのマーケティングについてはどうでしょうか。現在の消費者は、今我々が期待するような状態にあると言っていいのではないかと私は思っています。輸入チキンと国産チキンがあって、価格差はそれなりにある。でも大半の方が国産を選ぶ。ありがたい状態だと思います。しかし、それはスーパーマーケット等小売の現場だけのことで、外食、中食市場では表示の義務がないので、消費者は意識せずに輸入品を選択してしまっています。原産地を表示すべしというそもそもの趣旨からすると、明らかにおかしい状態です。私に言わせると、コンビニの店頭で原産国名を書かなくてもいいから、タイ産だったらタイ語で唐揚げと書いて欲しいし、ブラジル産だったらポルトガル語で書いてほしい。「唐揚げ」と漢字を使えるのは国産だけにして欲しいくらいです。ちなみに中国語ではもちろん、唐揚げは唐揚げではありません。
さて、昨年会員の有志で出かけて見てきましたイギリスのチキン産業は、アメリカやブラジルの桁の違う規模と違って非常に参考になると思うのですが、自国産の価値を上げるために、EUの厳しい基準に更に付加価値を付けた飼育基準を設け、英国内インテ共通のブランドマークをアピールしておりました。こういう手法が日本の消費者にまさしく響く国産チキンの価値を上げる手法だとは思うのですが、それ以前に外食、中食市場での表示の問題を何とかしなければ、結局空回りになると思います。なにせ国内のテーブルミート比率は30%でしかないのですから。零細業者まで守るべきルールをすぐ作り、実行せよとは言いませんが、大手の外食、中食業者さんにはルールを適用して、それがあるべき姿だと徐々に消費者に認知してもらえれば、広がっていくのではないでしょうか。

さて、昨年4月の技術ゼミナールの私の挨拶で、農場長に5年ごとに更新される国家資格をと提唱しましたところ、賛同の意見がたくさん聞かれるようになって来ました。私の地元の岩手県では、県庁が鳥インフルエンザ防疫対策に懸命に取り組んでいただいており、その中で、農場の方を集めて講習を実施し、終わったら修了証を発行するということをやることになりました。私の思う国家資格に近くなってきたと思います。それをもっと踏み込んで、講習と試験を組み合わせ、国家資格とすればいいのだと思います。自動車運転免許のように5年毎更新でいいでしょう。チキン業界だけ先にというのは考えにくいとは思いますが、鳥インフルエンザだ、口蹄疫だ、BSEだと昨今、畜産の病気に関する話題がここ10年異常に多くなり、食の安全に対する関心が高まっているだけに、国内の畜産業界が積極的に上のレベルを目指して取り組めば、ますます国産に対する信頼性が増していくことでしょう。実際これが実施されれば、畜産業のレベルが高くなります。そして社会的な地位が高まることで、業界全体でも採用面でも改善されるのではないでしょうか。
現代の畜産に従事する仕事をしている方は、飼育羽数、飼育頭数から考え、病気が発生した時の社会的な影響を考えると、人間で言えば医者とは言いませんが、少なくとも看護士さん以上の知識・技能が必要になっています。ドイツのマイスター制度ではないですが、日本は国家資格の種類に溢れる位になればいいと思うし、いずれ我々は高水準の頭脳でよりいい仕事を実践して、国際社会で生き延びるしかありません。
さて、今日は講演の演者として、株式会社グッドテーブルズ、山本謙治さんをお招きしました。地域の伝統の食から、本業である現代の農産物流通の世界まで幅広く詳しい方です。特に岩手や宮崎など辺境の地域に詳しくもありながら、チキン業界にはさほど、お詳しくないようです。ですから今回はちょうどいいスタンスでの話が聞けると私も楽しみにしております。本日はどうぞよろしくお願いします。」
と挨拶しました。

会長挨拶の後、会長が議長となり、総会議案1号議案~4号議案までの全ての議案が滞りなく審議・可決されました。また、報告事項として、会員の異動では㈱ミヤマブロイラーが退会、㈱阿部繁孝商店が㈱あべはんファームへ、プライフーズ㈱第一ブロイラーカンパニーがプライフーズ㈱へ名称変更致しました。役員及び委員の異動は、理事の今泉耕治氏(㈱スリーエム)が中村次郎氏に、米野元恭氏(丸紅㈱)が野村和伸氏に、種鶏孵卵部会委員の戸田功氏(㈱日本チャンキー)が西村薫久氏へ、藤田敏己氏(㈱イシイ)が小野公則氏へ、広報部会委員の吉原洋明氏(日本ホワイトファーム㈱)が西内利信氏へ変更となりました。

今総会にて優良会員として表彰された方々は以下の通りです。

□ 種鶏孵卵部会
部門賞
育成率の部 ・㈱児湯食鳥  99.18%
ヘンハウス産卵数の部 ・日本ホワイトファーム㈱ 宮崎生産部  214.50卵
ピーク産卵の部 ・丸紅畜産㈱ 霧島事業所  94.61%
産卵持続の部 ・㈱グリーンファーム  70%以上31週間
・㈱松本鶏園  70%以上31週間
孵化成績の部 ・㈱森孵卵場  88.8%
努力賞 ・宮崎くみあいチキンフーズ㈱
・鹿児島くみあいチキンフーズ㈱
優秀賞 ・プライフーズ㈱
最優秀賞 ・日本ホワイトファーム㈱
□ ブロイラー部会
部門賞
日増体の部 ・㈲松尾孵卵場 津田農場  69.1g
・㈱あべはんファーム 戸舘誠治農場  67.7g
出荷率の部 ・㈱松尾孵卵場 大西百合子農場  97.9%
・㈱関西ファーム 袴狭農場  98.2%
飼料要求率の部 ・㈱松尾孵卵場 石原農場  1.715
・山陰農芸㈱ 小川保農場  1.698
坪産肉量の部(中抜き有り) ・プライフーズ㈱ 鶴飼農場  174.8kg
・住田フーズ㈱ 小松ブロイラー団地佐々木榮農場  199.3kg
坪産肉量の部(中抜きなし) ・日本ホワイトファーム㈱宮崎生産部 大野甫第1農場  181.0kg
・日本ホワイトファーム㈱札幌生産部 CS-13農場  194.8kg
生産指数の部 ・㈲松尾孵卵場 石原農場  390.7
・山陰農芸㈱ 小川保農場  385.5
改善の部 ・丸紅畜産㈱霧島事業所 渡辺農場
・日本ホワイトファーム㈱東北生産部 CS-1農場
優秀賞 ・㈱あべはんファーム
最優秀賞 ・㈱大山どり
※ 各部門 上段・・・開放鶏舎
下段・・・ウインドレス鶏舎

2012年度チャンキー技術奨励賞 成績一覧

総会終了後に、㈱日本チャンキーの森永浩二社長が、「先ほど、種鶏とブロイラーの優秀な生産成績を収めた優良会員の表彰が行われましたが、年々向上するチャンキー種の性能もさることながら、基本に忠実に、常に鶏を観察しながら、状況に応じた適切な飼育をして頂き、その性能を余すことなく引き出して頂いた会員の皆様に改めて御礼申し上げます。

今回の表彰審査に当たっては近年、種鶏、ブロイラーともに生産成績の向上が著しく、上位を決める成績の判定は非常に僅差で、部門成績によっては、チャンキー種の標準性能をはるかに上回り、小数点第2位まで出さないとその差がつけられない状況も出ています。また、ブロイラー部門でも、全対象農場の年平均回転率は5.3回で、標準を上回り、選考委員の中からも、これまでの判定基準を見直してはどうか、との意見が出ており、これらを総合的にもう一度検討・議論して頂くことにしています。
最近のチャンキー種の性能や今後の育種方針については、昨年の総会ならびに秋口の技術ゼミナールで、改良元のエビアジェン社から説明してもらいました。エビアジェン社は世界最大の肉用鶏育種会社で、従業員が3,000人、毎年、売り上げの10%、約50億円を研究開発投資に振り向けることによって、種鶏とブロイラーの性能を継続的に改良・改善している。さらに、あらゆる環境下でも高い成績を出せるように、栄養管理・飼育技術の提供を含むサポート体制を整えています。

審査の対象となった昨年の平均総合成績をみると、種鶏部門の対象は39事業所、297鶏群で、羽数は約360万羽。これは日本の種鶏の年間餌付羽数から類推して約70%になるとみられます。平均産卵個数は194.02個で前年比8.55個増、ひな発生羽数は148.03個で3.19羽増となっている。これを成績上位4分の1でみると、平均産卵個数は205.72個で前年比8.21個増、ひな発生羽数は164.24羽で5.79羽増と平均を大きく上回っております。

ブロイラー部門の対象は24事業所、247農場、8,646万羽で、日本のチャンキー種年間餌付の約15%に相当するとみられます。開放・ウインドレスを合わせた1年間の総合平均成績は、生鳥重量は2,926gで前年比29.7g増、日増体は60.2gで0.8g増、飼料要求率は1.908で-0.08改善。生産指数は初めて300を超える304.3で28.8ポイント増となっております。

エビアジェン社は、今後日本で餌付けされる種鶏、ブロイラーの候補鶏として、エリートストック、原原種鶏を餌付けしており、ほぼ4~5年先まで性能・成績結果が分かっているため、さらに向上した来年の成績発表を楽しみにして欲しいと思います。日本チャンキーもチャンキー種の性能向上に劣らず、エビアジェン社と連携して、会員の皆様に優れた飼養管理や栄養の情報・技術を積極的に発信していきたいと思っています。

鳥インフルエンザのリスク管理体制について申し上げると、英国のエビアジェン社は、同国で初めて、政府のコンパートメンタリゼーションに基づく輸出許可を取得しました。これはOIEの基準に基づくもので、仮に英国内で鳥インフルエンザが発生してもコンパートメンタリゼーションに基づき、同社の農場や孵化場は周囲と隔絶した衛生条件と検査体制が保たれていることを政府が認め、輸出を許可するもので、これによって他の諸国への輸出が出来ます。ただ、日本はまだコンパートメンタリゼーションを受け入れていないため輸入出来ません。日本政府に英国の情報を伝えていますが、まだ日本の最終判断は聞いておりません。日本チャンキーとしては、英国産のチャンキー種を英国以外から輸入するルートの確保に努めるほか、過去に輸入したことがある米国産チャンキーの性能が最近、大幅にアップしているとのことで、それを確認するためのトライアルを行うことにしています。

今年4月には、岡山県瀬戸内市に最新の孵化場が竣工し、5月末から日本全国へチャンキー種鶏ひなの供給を始めましたが、今後もチャンキー種の性能向上に見合うような農場や施設の改善、イノベーションを図り、社員、スタッフ一同努力していきたいと思います。」と挨拶しました。

OLYMPUS DIGITAL CAMERAその後、㈱グッドテーブルズ、山本謙治氏より『「日本の食は安すぎる」~鶏肉の業界が今後目指すべき方向性とは~』の題目で講演されました。
最後に、㈱日本チャンキーの大槻敏章常務より、瀬戸内孵化場についての概要説明があり、終了致しました。