去る平成16年9月8日~9日に、東京グランドホテルに於いて第80回技術ゼミナールを開催致しました。
ご参加下さいました各社皆々様、またホテル会場スタッフの皆様、誠に有り難うございました。皆様方のお陰で、無事終了する事が出来ました。
今回のゼミの内容について、下記の通りご報告申し上げますので、残念ながらご参加頂けなかった方、再度ご覧になりたい方は是非ご覧下さい。

また、ご意見・ご感想等お気付きの点がございましたら、こちらまでご連絡下さい。

80th_tech_M_kenny平成16年9月8日、9日の両日、東京都港区の東京グランドホテルにおいて、第80回技術ゼミナールを開催致しました。鳥インフルエンザ発生のため、前回の79回から約1年振りの開催です。ところが、今回は大型台風の影響で一部の方々が出席できない事態ともなりまたが、全国から150名の会員の皆様にご出席頂き、熱心に聴講されました。

80th_tech_S_Tullett田中康之氏(㈱日本チャンキー)の司会で進められた第1日目の冒頭に挨拶された秋山会長(日本ホワイトファーム㈱社長)は、「今年1月に国内で79年振りに発生した鳥インフルエンザは、業界に大きな衝撃を与え、生産の不安とともに鶏肉消費にも甚大な影響が発生した。ようやく最近になって消費が戻りつつあるようだが、この冬に向けては防疫管理を徹底せねばならない。また、6月に発生した原種鶏でのトラブルも業界に大きな衝撃と種鶏の供給不足での不安を与えたが、種鶏の追加輸入が順調であることなどから、当初伝えられた不足羽数の相当数が補填出来る見込みとの事である。今後も再発防止に努め、安定供給に邁進して欲しい。世界的な異常気象なのか、今年になり続々と本土上陸の台風が襲来し、業界においても鶏舎の損壊などの大きな被害が出ている。暗いニュースの中で唯一明るい話題を提供してくれたのが先般のアテネ・オリンピックでの日本選手の活躍である。中でも若手選手の健闘は大いに賞賛されるものであり、我が業界もこのような頑張りを以て業界の難局に立ち向かいたい」と述べられ、1日目のプログラムが始まりました。
80th_techエビアジェン社のマーカス・ケニー氏は、『チャンキーブロイラーの栄養について』と題し、エビアジェン社の将来の遺伝的育種傾向を述べられた上で、チャンキーブロイラーによって最高の利益を上げるための飼料中の最適アミノ酸濃度について、更にその重要性についても詳細に説明されました。
その中で、飼料原料価格が上昇した時の戦略として、飼料中の栄養レベルの調整で最終飼料価格を下げようとする動きに対して、このような考え方がチャンキー種にとっては成績低下を招き、結果として全体の収益性を低下させることを強調されました。また、成績分析によって、特にスターターの栄養レベルに反応する事が明らかになり、基準としてこの時期に栄養レベルを10%高めると7日令で体重が10g増加し、出荷時には30~50gの体重増加が見込まれる事、逆に栄養レベルを10%低下させると出荷体重が減少する事も説明されました。
80th_tech_kaichouエビアジェン社では、最高の利益を上げる為のタンパク質レベルを求める為に、ブロイラー最適タンパクプロジェクトのもとで、飼料・原料価格と農場や処理場コストなどをもとに最高の利益を試算出来る最適ブロイラータンパク計算表を作成している事も解説されました。
まとめとしましては、
①ロス(チャンキー)ブロイラーの成績改善は今後も続く
②エビアジェン社は飼料中の最適アミノ酸濃度を評価する方法を既に知っている
③飼料中の栄養濃度は生産する製品によって異なる
④会社の利益を上げる為の飼料
⑤大きく育てるには良いスターター飼料が極めて重要
とされました。

80th_tech_kougiつづいて、アニトックス社のスティーブ・タレット氏が『孵化技術の解説』と題し、最新の孵化技術について詳細に解説されました。孵化技術の考え方として、新しい研究知見や野鳥における孵化の研究、洗練された孵卵機の制御およびデータ収集と活用、遺伝的選抜による胚と卵の変化などをもとに、孵卵実務の継続的な変更が重要であるとして本論を進められました。
講演の中では、入卵前・孵卵中・孵化後の各ステージに沿って解説され、「産卵時の発育ステージでは慎重な取扱いが重要であり、なるべく早く胚の発育を停止するため、生理的零度(23.9℃以下で胚盤葉の発育停止が確認されている)以下に冷却し、1週間内の貯卵条件では15~16℃、相対湿度は75%が最適である」と解説されました。
最適孵化の目安としてのハッチウインドウ(雛取り出し前の累計孵化率)を示しますと、取り出し前の36時間では1%、24時間前では30%、12時間前では90%の雛の孵化状態が理想的であるとされました。また、異なる母鶏週令の種卵を混ぜるとハッチスプレッド( 孵化のバラツキ)が長くなることも示されました。

最適孵卵コンディションと最高の雛質にかかわる鍵として、雛取り出し36時間前から孵化が始まり、嘴打ちまでに12%の卵重減少と67%の雛体重(注=いずれも対新鮮卵重;産卵時卵重)が重要であることを示されました。
将来の展望としては、

① 湿度制御と水分減少率の自動卵重測定
② 二酸化炭素モニタリングによる自動換気制御
③ 種卵表面温度に基づく自動温度制御
④ 移卵時の自動検卵、中止卵除去とデータベースによる記録
⑤ 移卵時の性別判断
などの開発が進み、今後の目指すべきこととして、
① 良好な種卵の取扱いと貯卵
② 嘴打ち時の対新鮮卵卵重減少12%
③ 適正な孵化所要時間と雛取り出し対新鮮卵雛体重67%
④ 取り出し後の出来るだけ早い給餌
⑤ 発育中止のカテゴリーに関する指標の作成
⑥ 実用的な雛質測定法の考案
などであると結ばれました。

日本チャンキーからの概況説明として、菊池修社長から6月の鶏病に関連した供給不足についてのお詫びと、これまでの経緯並びに今後の対策などについて説明があり、「追加輸入や他鶏種の協力などから、8月以降はほぼ不足無しで推移するのではないか」との見解を示されました。また、「出荷削減に関わるコマーシャル雛への影響は、来年3月以降から11月までにかけ、月間2-3百万羽が減少し、合計で25百万羽程度と見らるが、他鶏種の対応やアウト延長ならびにジュニア卵の活用など考えると、その影響は遙かに小さくなるであろう」との事でした。

最後に、「社員一同初心に立ち返り、万全を尽くす所存であり、変わらぬご支援をお願い申し上げる」と述べられ、1日目のプログラムを終了しました。

終了後の懇親会では、出席会員の方々が和やかに歓談され、初秋の東京の夜を過ごされました。

森泰三氏(㈱森孵卵場)の司会で進められた2日目は、戸田功氏(㈱日本チャンキー)が全国実績調査の種鶏成績について分析結果を、続いて田中康之氏(㈱日本チャンキー)が同様のブロイラー成績についてそれぞれ報告されました。

橋本信一郎氏(丸紅畜産㈱)が『バイオセキュリティーを現場から考える =高病原性鳥インフルエンザの発生を踏まえて』と題し、バイオセキュリティーそのものの意義をはじめ、アジア及び日本国内での発生事例や、海外での状況などについての詳細を分かり易く解説され、感染経路や今後の汚染防止策についても知見を述べられました。

まとめとして、高病原性鳥インフルエンザ感染経路究明チーム座長の寺門誠致氏の報告書のおわりに記された内容を紹介され、「日常の基本的な家畜衛生管理の実践」が最も大事なことであり、このことが「バイオセキュリティー」であることを述べられ、講演を終わられました。
松本弘文氏(㈱松本鶏園)が閉会の挨拶を行われ、2日間のゼミナールを終了した後、各部会委員会(種鶏・ブロイラー・広報)による合同委員会が開かれ、次回開催予定の第81回技術ゼミナールの開催要領について検討されました。