【 第93回技術ゼミナールを福岡で開催致しました 】
9月7日(水)・8日(木)の二日間にわたり、福岡市のアークホテル博多ロイヤルにおいて、「第93回技術ゼミナール」を全国から270余名もの会員の参加を頂き、開催致しました。
ゼミナールの冒頭、山下保美協会副会長(㈱ジャパンファーム)は、ゼミナールへの大勢の参加に対して謝辞を述べた後、「3月11日の東日本大震災におきまして、被災をされた会員の皆様方には心からお見舞いを申し上げます。合わせて、その復旧に急ピッチで向かわれた皆様方のご努力に対して敬意を表します。本当にご苦労様でした。最近強く感じることは、世界もそうですが、日本はとても大きなうねりで動いているということ。例えば、TTPの参加問題、大自然災害(地震、津波、台風での水害・・・)、エネルギー問題、放射能問題、そして政治の問題と、色々なことが大きく変わろうとしています。我々の足下、畜産業界を見ましても、口蹄疫と鳥インフルエンザの、過去にない規模と発生頻度に直面しました。グローバル化というものは、経済も政治も色々な意味で世界を小さく(身近に)しましたが、家畜の病気もまた、世界共通の(身近な)ものにしたのかなという感じを強く受けます。残念ながら、変わる世の中(環境)を我々の手では止めることは出来ません。大きく変わっていく環境に対して、我々は寄り添いながら、そして対応策を立てて生き延びていくしかありません。事業において、効果的な対応策を素早くきちんと講じなければ、会社は生き延びていけない時代がやってきたのだと思います。その様な状況の中で、私たちに出来ることはなんでしょうか。
例えば、2つあげるとすると、それは行政への働きかけと、もう1つは我々の軸足である養鶏業をきちんと行うということだろうと思います。行政への働きかけについては難しい問題です。関係各位の多大なるご努力により、実務実態に沿った措置に大きく舵を切ろうとしております。心から感謝をしております。2つ目の養鶏の事業ですが、おそらくこれから迎える冬場においては、いつ直面するかも分からない、鳥インフルエンザの驚異の中で、事業を継続していくことは避けられないことです。その中で日本チャンキー社には、いかなる事態が起ころうとも、我々にチャンキー種を確実に届けて頂きたい。そして我々は、それをしっかりと受け取り、しっかりと管理して雛を生産する、またはブロイラーを肥育していく。その連鎖を途切れさせないことだと思います。
チャンキー種もUSからUKに変わりました。日本チャンキーの指導をしっかりと受け止め、そして情報をきちんと整理して、生産性向上に邁進して頂きたいと思います。そして、安心安全な鶏肉を市場に送り続けること。その継続して送り続けることこそが、「がんばろう日本」へ繋がる力強い道だと信じて、業界全体で支えていこうではありませんか」と挨拶しました。
一日目は、㈱ジャパンファームの山口清隆氏の司会で進められ、最初にエビアジェン社のマイケル・ロングレイ氏が「チャンキー種鶏後半の生産性向上」をテーマに掲げ、基本に立ち返ったメスの育成管理、体重コントロールと斉一性の重要性について講演しました。氏は、生産期の飼料の増量、減量について細かく説明、またオスの高い受精率維持にスポットをあて、良い形質を多くのスライドで紹介するとともに、メス同様、育成、生産期の管理、斉一性の重要性を強く訴えました。
続いて、去る8月にニュージーランドのティーゲル社を訪問した㈱日本チャンキーの森川敦夫氏が、「ニュージーランドのブロイラー事情」と題して、同国のインテグレーター、ティーゲル社でのチャンキーブロイラーの高い成績、同国の鶏病事情を紹介しました。
最後に、酪農学園大学の遠藤大二教授による、「放射線汚染が家畜に及ぼす影響」のテーマで、放射線というものを分かり易い説明で、その影響、対策等講演頂きました。
一日目終了後の懇親会では250名が集い、UKチャンキーに切り替わってからの好調な成績や、各社の飼育管理技術の情報交換したり、一日目の講演内容を話題に和やかに、かつ有意義に過ごしました。
ゼミナール二日目は、宮崎くみあいチキンフーズ㈱・吉川透氏の司会で進められました。最初に㈱日本チャンキーの田中康之氏が、「冬期に向けてのブロイラー管理」をテーマに、野外での鶏舎内の写真等を使い、有用な技術や注意点を事細かく説明しました。続いて、会員からの野外報告として、UKチャンキーに切り替わり、以前にも増して成績が向上したとして、丸紅畜産㈱の首藤悠氏と、㈱大山どりの島原道範氏からそれぞれ自社の実績報告がありました。
全ての講演が終了した後、昨年度の種鶏、ブロイラーの成績において、優良会員の表彰が行われ、受賞会員に対し、山下保美副会長から賞状と副賞が手渡されました。
表彰終了後、㈱日本チャンキー戸田功氏より、昨年度の会員から寄せられた成績集計のまとめとして、種鶏、ブロイラーの成績に対する講評がありました。
二日間にわたる、ゼミナールの閉会の挨拶に立った種鶏孵卵部会長の山上祐一郎氏(㈱福田種鶏場)は、今回も沢山の会員の参加を頂き、主催者の一人としてお礼を言いたい、とした上で、「技術ゼミも今回で93回を数えることになりました。我々になぜこのような勉強会が必要かと徒然考えるに、牛・豚・鶏という畜種の中で、取り分け鶏(ブロイラー)は目覚ましい育種改良を遂げてきたと言えます。70年代は70日以上飼って2.5kgだったブロイラーは、今や50日で3kgを超えるまでになった。
これは、単純に毎年1日ずつ出荷日令が短縮されてきたとも言えます。 その急激に進育種改良に、管理面で応えていくには、エビアジェン社及び日本チャンキー社からの最新の適格な技術アドバイスと、それを共有して情報交換を行う機会が必要となり、このようなゼミが必要となるわけです。
今後もチャンキー種の供給元のエビアジェン社、並びに日本チャンキーには最新の技術情報を期待します。
話は変わるが、世の中には「スポーツマンシップ」であるとか「リーダーシップ」という言葉は良く聞く言葉ですが、イギリスで「ストックマンシップ」という言葉を耳にしました。直訳するなら、畜産従事者魂とでもいうのでしょうが、それは動物(鶏)に対する愛情、健康に育てる責任感、鶏を肥育する誇り、動物愛護のマナーだと私は思います。古くから羊と生活をし、馬の育種を手掛けたイギリス人ならではの心(魂)と、私は思います。特に今後、我々の産業を担っていく若い人に、この「ストックマンシップ」を伝えていって欲しいと思います」と述べ、ゼミナールの全日程は終了しました。
技術ゼミナールプログラム
●第一日(9月7日)
司会 山口 清隆 氏/㈱ジャパンファーム
1.開会の挨拶
日本チャンキー協会 副会長 山下 保美氏
2.講演:「チャンキー種鶏後半の生産性向上」
マイケル・ロングレイ氏
3.報告:「ニュージーランドのブロイラー事情」
㈱日本チャンキー 森川 敦夫氏
4.講演:「放射線汚染が家畜に及ぼす影響」
酪農学園大学 教授 遠藤 大二氏
● 第二日(9月8日)
司会 吉川 透氏/宮崎くみあいチキンフーズ㈱
1.講演:「冬期に向けてのブロイラー管理」
㈱日本チャンキー 田中 康之氏
2.報告:「当社のチャンキーブロイラー成績」
その1 丸紅畜産㈱ 首藤 悠氏
その2 ㈱大山どり 島原 道範氏
4.実績調査報告:
表彰
成績講評 ㈱日本チャンキー 戸田 功氏
5.閉会の挨拶
日本チャンキー協会 種鶏孵卵部会長 山上 祐一郎氏