【第97回技術ゼミナールを福岡で開催致しました】
日時:2013年9月18日(水)、19日(木)
場所:アークホテルロイヤル福岡天神
2013年9月18日(水)・19日(木)の両日にわたり、アークホテルロイヤル福岡天神(福岡県・福岡市)において、第97回技術ゼミナールを開催致しました。
ゼミナール開催に先立ち、森泰三副会長(㈱森孵卵場社長)は「先日の台風18号により被害を受けられた方も多いと思いますが、本日の日本チャンキー協会第97回技術ゼミナールには、約260名が参加されたとのことで、心より御礼申し上げます。特に20~30代の方が多く参加されているため、今後の若手の活躍を期待するとともに、種鶏孵卵の歴史を振り返りながら、少しお話しをさせて頂きたいと思います。
種鶏を飼育して種卵を採取、孵化し、雛を販売するという商売は大正時代から始まったと記憶しており、この時代の創業であれば、100年の歴史を持っていることになります。しかし最盛期に1,500社程あった孵卵場は現在、10分の1以下に減りました。ブロイラー専業では、支店やグループを1社とすると、40社くらいではないでしょうか。何故こんなに減ったのでしょうか。この激動の歴史を乗り切った先輩方、業界の重鎮の方々から色々とお聞きし、私なりに生き残りのための重点を3つ挙げるとすると、①種鶏選択 ②防疫 ③人の管理となりました。これらは時代が変化しても大事な事ではないかと考えます。
まず、鶏種選択ですが、私が子供の頃を思い出しても、実に多くの種鶏が存在しておりました。どの鶏種を選択するか、また独占できたかで、企業の繁栄または衰退が顕著に現れたと思います。今でこそ新規会員の承認はスムーズに決議されていますが、昔は会員になるために、理事メンバー1社1社への根回しが必要だったと効きます。それほど鶏種選択は重要でした。
それでは、鶏種選択において何が重要なのでしょうか。私が業界に入った時に、他社の先輩から「種鶏1羽の価値は1万円であるべし」と言われた言葉を思い出します。この金額は、種鶏1羽に費やした経費ではなく、売上、要するに雛単価×種鶏1羽当たりから雛で売った数を価値としています。現実ではありえない数字で説明させて頂くと、雛単価が50円であれば、種鶏1羽当たり200羽の雛を売らなければならないということです。逆に種鶏1羽当たり100羽しか売れない能力の鶏であれば、雛1羽を100円で販売しなければ経営は成り立たないということです。皆さんの会社ではどうでしょうか。当社は全く届いておりませんし、失礼ながら皆さんの会社でも難しいのではないかと想像します。実際に、ここまで事業が継続できたのも、チャンキー種の能力に助けられての事だと思います。しかし、このまま飼料価格の高騰が続けば、種鶏1羽当たりの価値より経費の方が上回り、経営を続けるには難しい状態が続きます。低い食鳥相場が続くとすれば、チャンキー種に期待することは、さらなる生産性の向上しかなく、そして会員の皆様方には鶏種の能力を最大限に引き出す努力しかないのではないでしょうか。
次に防疫についてお話しします。結論から申し上げると、現在のような天候や気温が今後も続くのであれば、防疫に対する考え方を変える必要があると思います。今夏は猛暑に加え、竜巻、ゲリラ雷雨と非常に多くの災害が起きました。これを地球温暖化による自然からの警告とみれば、来年の夏どころか、毎年この恐怖から逃げることが出来なくなるのではないかとも思います。
身近な齢として、今年の猛暑では我が社の大事にしていた松の木を枯らせてしまいました。この原因は果たして水不足だけなのかと考えてしまいます。私なりに分析すると、原因として「松は水をあまり与えなくて良い」といった先入観、そして気温が35℃以上になった場合の生態系の変化を予想していなかったことが挙げられ、鶏の飼育と同様に、観察が足りなかったと反省しております。先入観については、昔、部活動の練習中に水を一切口にすることができなかった時代があります。野球で言えば「ピッチャーは肩を冷やすな」と言われましたが、今では練習中の給水や、試合後の肩の氷冷は常識化しており、情報が乏しい中で指導者の言われる事を信じ切っていたことを思い出します。
昔に比べて気温が上昇している中で、「今まではこうだった」との先入観は非常に危険だと感じます。先程の松の木の例えではありませんが、気温の上昇に伴い、今までの常識が通じなくなっているとすれば、飲水量や餌の内要請文の見直しも大事であり、たとえばビタミンやミネラルなどは、推奨値よりも1.5~2倍ほど鶏は必要としているかもしれません。また、生態系が変化すれば想定外の鶏病や検査結果が出てきても決して不思議ではありません。このように、観察だけでは追いつかない事例が出てくるとすれば、専属の獣医師や餌のスペシャリストの養成が今後ますます重要となります。協会に対する希望を1つ申し上げれば、2年に1回、または最低でも、今回の東京オリンピック決定にあやかり、4年に1回はゼミナール翌日の午後などを利用し、獣医師ミーティング、もしくは技術者ミーティングを開催してほしいと思います。
次に、人の管理です。管理と聞けば抵抗を持つ方もおられるかと存じますが、いわゆる人材育成です。最近、農学部の大学教授から聞いた話ですが、我々の業界を畜産業とすれば、ねずみ年を境に、従業員数に大きな違いが現れているそうです。昭和24年の丑年から昭和35年のねずみ年の間に生まれた、年齢にして64歳から53歳の方々の年齢層は、比較的充実しているそうです。しかし、昭和36年から昭和47年までの12年間に生まれた、52歳から41歳の方々は極端に少なく、そして次の⑫年間の40歳から29歳は少し盛り返しているそうです。残念なのは、28歳より年齢が下の方々で、採用が減ったか、もしくは続かなかった傾向があるそうです。団塊、または団塊ジュニアといった世代の人口や、その当時の経済の状況により、このような結果になっていると思われますが、わが社で分析しても、非常に信憑性のある興味深いデータです。
この事から私は、現在29歳から40歳くらいの方々が、今後のブロイラー業界の中心となって活躍されることを期待しております。もちろん、この年齢以外の方は活躍しなくて良いということではなく、技術継承や若手育成になお一層取り組んで頂き、今後新卒で入ってくる人材に対し、夢のある良い職場が提供できる環境にマネジメントして頂きたいのです。
今回のゼミでは、勉強も大切ですが、若手の方々は懇親会で何人と情報交換が出来るでしょうか。我々が反省すべき事として、これまでは競合他社との情報交換や視察などは、御法度の傾向があり、人材交流に消極的な面もありましたが、今後はこのようなことに積極的に取り組み、また協会のゼミナールや海外ミッションなどにも出来るだけ多くの若手の方に参加して頂きたい。厳しい競争下ではあるものの、生涯の友をつくるくらいの思いで、若い人をどんどん外へ送り出し、協会全体で若手の人材育成に取り組んで頂きたいと切に願います。」
と挨拶しました。
本ゼミナール講演プログラムは以下の通り。
講演が終わり、最後に神田謙一ブロイラー部会長(住田フーズ㈱常務)の閉会の挨拶で、全日程を終了致しました。
技術ゼミナールプログラム
● 第一日(9月18日)
司会 大脇 秀吉 氏/㈱山形種鶏場
1.開会の挨拶
日本チャンキー協会 副会長 森 泰三 氏
2.報告:
「種鶏、ブロイラーの実績調査まとめ」 ㈱日本チャンキー 西村 薫久 氏
3.講演:
「成績優良会社の実績報告」
○種鶏
日本ホワイトファーム㈱ 増山 貴久 氏
鹿児島くみあいチキンフーズ㈱ 東 幸弘 氏
プライフーズ㈱ 佐藤 淳一 氏
○ブロイラー
㈱大山どり 島原 道範 氏
㈱JAフーズさが 市丸 善登 氏
住田フーズ㈱ 近藤 考洋 氏
4.講演:
「Aviagen’s commitments to you!」 エビアジェン社 トム・エクセレイ 氏
● 第二日(9月19日)
1.講演:
「育種改良の方向 現在の成績と将来の予測」 エビアジェン社 ドミニック・エリフィック 氏
2.報告:
「冬場の管理ポイント」 (株)日本チャンキー 森川 敦夫 氏
3.アンケート調査実施
4.閉会の挨拶
日本チャンキー協会 ブロイラー部会長 神田 謙一 氏